印刷会社が考える電子書籍流通のあり方は「出版社と印刷会社の共同事業」である。両者は紙の出版物中心の「旧大陸」では手を携えて生きてきた関係。このまま仲良くグーグル、アマゾン、アップルなどのプラットフォーム企業が猛威を振るう「新大陸」に乗り出しましょう、というのが印刷会社の提案だ。

「俺らがプラットフォームやコンテンツ作成でいろいろ苦労してきたのに、後で割り込んでくるなボケ」(意訳)というほうが正しいと思う。そもそも今年は「日本における電子出版元年ではなく、ただのターニング年でしかない」。まあ、それを元年と記す、とかいわれると身も蓋もないけれども。
あとこの部分の直前にある記載と微妙に矛盾してる気がする。既に自前の電子大陸を持っててその領土を拡大したいだけにすぎない、のが大手印刷会社の意向じゃないかと思う。大手以外は……うーん。



出版社の赤字校正を反映させた印刷用のデジタルデータを最終版と呼ぶが、最終版を印刷会社に預けっぱなしにしている出版社が少なくないのだ。戻ってきたデータをきちんと保管していない出版社も多い。

(中略)

「最終版は出版社のもの。その権利関係もしっかりと確認してください」。印刷会社と出版社間のベッタリした関係と、小売価格を出版社の指定した価格に拘束できるようにしたい出版社の大きな抵抗に遭遇し、進出を阻まれている格好だ。

これはひとつの括りだけでは終わることはない。
印刷会社にあるデータには、会社にもよるけど大きく分けてふたつある。「外部で作成されたデータ」と「内部で作成されたデータ」。

そして「外部で作成されてから印刷会社に入れられたデータ」は「コンテンツとしての最終データとは限らない」という問題がある。「印刷に最適化、と考えられた形で入稿されたデータに過ぎない」。全部アウトライン化されてたら、文章としては一切利用できないので、それを二次利用のコンテンツとして利用できるかどうかはまた別物である。下手したらそれどころではなく、目も当てられません。デジタルコンテンツ用の画像のみとして利用するにはじゅうぶんなクオリティかもしれないけれども。あとこの場合、「コンテンツとしての最終データ」は、データ作成者が所有するわけなので、印刷会社に求める必要はないはず。

また「内部で作成されたデータ」は、出版社に渡す必要はない可能性がある。これについては「製版フィルム廃棄損害賠償請求事件判決」をはじめとする、数々の判例に沿った結果の判断になる(「印刷 中間生成物」で検索するとより多くの情報が得られる)。ただ「データそのものの判例」はもしかしたら未だにないかもしれない(自分が知らないだけかもしれないが)。しかし先の検索結果より辿り付ける印刷会社の見解等では、フィルム時代の判例を基準に自己防衛を行っている場合もあるうえ、確かに印刷用データといっても「元は別に作成されたもので、それをひとつのコンテンツとして印刷用に収集・最適化しただけのもの」にすぎなく、データ自体が著作物そのものというわけではないはず。ただこのあたりは複製元のマスターとして考えると微妙だけれども。ただ、たとえば小説の場合は、手書きの原稿があるならそれがオリジナルになり、かつそれが本来のマスターだ。写真なども同様で、印刷用の収集・最適化前が本来のオリジナルになるわけで。となると手間と時間さえ考えなければ、そこからいくらでもやり直しはできる、ということでもある。
いずれにしても、記事の内容からすると、この判例のことは存じ上げてないだろうと考えてしまうわけで。



そういう意味では「ちょっと認識まずくね?」というのが個人的な見解。所詮電子出版ビジネスといっても、現状では「従来の印刷の延長上でしかない」のもまた事実なので、過去の事情および司法判断が影響する場合は十分に考慮・配慮する必要があるんじゃないか、と考えたりします。それも考えておかないと自分の首を絞める羽目になるかもしれませんよ。

そもそも海外とは事情が違うので、同一ケースとしてあてはめずに各国の事情を考慮しつつやらなきゃどうしようもないことまで考慮しないといけないので、そういう意味では一方的な記事だなと思いました。まあシナリオ描いて記事つくらないとあんな短い中で終わらないだろうからそんなもんだろうけれども。



#はてブのコメントも確認したけれども、外部作成はさておきとして、中間生成物の件って誰も触れてないのね。覆る可能性があるといっても原則判例主義の日本ではそれに触れるのは大事なことなはずだけれども。

このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 印刷会社にあるのは「印刷用の中間生成物である最終データ」

コメント

>>とぶよんさん
このあたりは時代の流れとかもあるので完全に一概にはいえないところですが、確かに設備投資・データ保管管理・そして手間暇のことを考える必要はおおいにあるような気がします。都内23区内にでっかい倉庫借りてフィルム保管している会社もあるくらいなので。
そういう意味では、出版社も電子出版の権利狙いの会社も、現状および国内事情をじゅうぶんに把握する必要があるだろうと考えます。

というかエンドユーザーまで含めていいとこ取りばかり狙いすぎな事実は間違いないだろうと。真面目に思うときがありますです。

そもそも出版社は印刷会社に電子出版用に金なんてたいして払ってない事実

PDFは通常の印刷依頼のおまけで貰えるってのが真実じゃないかね
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