「中間ファイル」と考えるとたぶん失敗すると思う

電子書籍の3省懇談会、著作権集中管理や統一中間フォーマットの検討を提言【Internet Watch】
(ちなみにニュース自体を知ったのはスラドのほうからという。)

利権が絡んでいる云々はさておき、中間フォーマットなんてあまりうまくいくわけないと思うけどな。紙ですら、ソフトによって表現できる範囲が違うことや、縦横での組みでも影響があって然りなのに。

一番の問題は「それぞれで表現できる範疇が違うので、どうやってそれを吸収するか」というところ。

そういう意味では既存DTPソフトでも同様なんですが、テキストデータを読み込ませて表示するだけの「電子書籍再生機」(※)の場合、機器によってできる表現、そして機能は異なって然り。結果として最終的に判断出来るフォーマット(最終フォーマット)ももちろん違う。
となると、中間フォーマットを利用するとしても、「各種機能をまんべんなく対応させよう」といった場合には最終フォーマットすべての機能や処理について網羅しなければならないおそれがある。
それが、最終フォーマットがふたつくらいならまだそれほど問題ではないかもしれない。ただ、3種類以上、たぶん普通に考えればそれ以上あるわけですが、それを全部網羅しなきゃならないとしたらえらいことですよ?

印刷用レイアウトソフトの例として、2種類で違う場合を出します。書籍ならたぶん必要なシーンの出てくる「振り分け」。これも機能のあるなしで結果が変わる。InDesignでは振り分けできませんが、他のソフトはできるとする。となった場合、中間フォーマット側としてあわせるべきは「他のソフト」であって、InDesignはむしろその違いをどう吸収するか(処理自体やめてしまうか、別の処理にするかなど)を考えないといけない。しかし中間フォーマットはもちろんその情報は必須になる。そんな例。



となった場合、中間フォーマットデータを作るだけでむちゃくちゃ労力がいる可能性が出てくるし、最終フォーマットにコンバートした場合は変換時点での考慮が必要。さらに、新たな最終フォーマットが出現した場合には過去の互換性を考慮しつつ中間フォーマット仕様を更新しなければいけなくなる。いつまでも終わりはありません。メビウスループ。



そこでふと思ったのが「そもそも電子出版用にはすでにフォーマットがあるじゃないか」と。
日本電子出版(JEPA)が定めた出版物交換用XMLフォーマットである「JepaX」が。

……交換用と考えるとこれも一種の中間フォーマットのはずですが、これ自体が出てこないこと自体が妙。それに、これ自体が普及したなんていう話は聞いたことがないような(ローカルで利用される例はあるにしろ)。というかこれを拡張して、別に新しい中間フォーマット形式作る必要ないじゃないか、と。



まあ、JepaXはさすがに仕様自体が古くて難しい面があるので新たな中間フォーマットを定義した方が効率が良いだろう、と思わなくもないですが、過去の事例を考えるときっと普及しないか、妙な普及の仕方しかしないんじゃないかなあと思ってしまいました。

ついでにいうと、交換を考えないとしても、「書籍用の中間フォーマット」とした場合、書籍といっても複数の表現パターンひとつの定義だけではやたらと複雑な構造になってしまう気がするし、かといってジャンル別に定義を変えるとジャンルごとに考慮しなければならなくてやっぱり複雑になってしまうので、出版・印刷業界人が直接扱うにはむちゃくちゃやさしくないものだけが出来てしまい、結局は誰もあまり幸せになれん気がします(もちろんそこにビジネスチャンスはあるにせよ)。昔から言われているXML化についても普及しないのは、このへんが影響してるように考えてたりします。



ところで話を最初の記事に戻しますが。
そこでは「“電子”書籍用の中間フォーマットを策定する」となっているけれども、たぶん世の中的にはその引用符部分が無視されて「書籍用の中間フォーマットを策定する」という、オイシイ言葉だけがひとり歩きしてしまう気がする。個人的に一番こわいのはそこです。



(※)「とある情報を読み込んでそれを機械のほうで再生する」ということなので、CDやDVDと同じような扱いとかわらんです。それがソフトだろうがハードだろうが、再生(Play)するというのは同じ。問題は情報および解釈・表現方法が機器によって違うことなんですが、たとえばePubでも再生ソフト側で解釈の考えが異なる場合が出てくる可能性があるので、そういう意味ではCD・DVD以上に複雑で面倒でどうなるかわからんのが怖いところかも。

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